めぐるコラム

紫雲膏 ~漢方薬について考える~

ひび・あかぎれ・しもやけ・魚の目・あせも・ただれ・外傷・火傷・痔核による疼痛・肛門裂傷・湿疹・皮膚炎などに幅広く効果を発揮するとされる『紫雲膏』という軟膏をご存知でしょうか?
紫雲膏は漢方薬の軟骨で、第2類医薬品です。シコン(紫根)・トウキ(当帰)・ゴマ油・ミツロウを成分とします。赤紫色で独特なにおいがあります。
中国の明代の書物『外科正宗』に記載される潤滑膏です。日本では江戸時代の医師である華岡青洲が潤滑膏に豚脂を加えたものを『紫雲膏』として使い始めたとされます。
めぐる漢方薬局でも、わざわざ宣伝やおススメはいていませんが、お買い求めのお客様がよくいらっしゃいます。
私も家族も症状にあわせて使っています。
寒くなってくるとかかとや手のひら、唇などのひび割れやがさがさに困る方は多いと思いますが、特にひび割れにはよく効果を発揮してくれます。
ひび割れの割れ目に赤紫色が残ってしまうのはちょっと難ですが、しみたり、痛くないのは良い所だとおもいます。
紫雲膏は漢方薬のメーカーさんからそれぞれ発売されています。
ウチダ和漢薬という漢方薬のメーカーさんは、どの漢方薬もとても品質が良く、信頼と実績の確かなメーカーさんです。ウチダ和漢薬さんからも紫雲膏は発売されています。こちらもとても質が良く、確かな効果を発揮してくれる頼れる紫雲膏です。
ところが、ウチダ和漢薬さんから突然『紫雲膏の生産停止』をお知らせされました。理由は
①原料のゴマ油について、日局に適合する香りの強いゴマ油の入手が困難となりました。他の日局ゴマ油を使用した場合、紫雲膏にゴマ特有の香りが殆どなく従来の品質が維持できない。
②原料の紫根は紫雲膏の色調(濃紫色)の特質を踏まえ紫色の強い野生品を使用しているが、野生品の資源枯渇に伴い今後の入手が困難となり紫雲膏の色調を維持できない。
ということです。漢方薬に真面目に向き合うメーカーさんならではの理由です。
漢方薬は植物の葉や根、動物の特殊な一部分が原料であることが多く、化学製品のように安定した生産が難しいものがほとんどです。今までも、他メーカーさんの製品ですが牛黄(ごおう)や麝香(ジャコウ)などの動物薬が、原料の高騰によって製品の値上げがありました。
漢方薬は今後も安定供給は難しいものだと思います。
今ある自然のめぐみに感謝しつつ、お客様になるべくご負担にならないようにご提供できれば、と思います。