めぐるコラム

私の父のお話

私の父は3年前に膀胱がんがきっかけで亡くなりました。80歳でした。
生前の父は食べることが大好きで、焼き肉を始め、肉や魚をよく食べていました。白いご飯もよく食べる人で、なめ茸の瓶詰めや昆布の佃煮、辛子明太子などいわゆる『ご飯のお供』で白いご飯をどんぶり1杯食べていました。甘いものも大好きで、ブラックコーヒーと和菓子や洋菓子をよく食べていました。
中でもアイスクリームに目がなく、実家に行くといつも高級アイスから安いアイスで冷凍庫がパンパンでした(笑)。
たばこも35歳くらいまで吸っていましたが、きっぱり止めています。
お酒はそんなに飲まず、晩酌ほぼしませんでした。
健康診断も受診を勧められるものは必ず受診していました。かなりこまめに健診は受けていたのに、転移のがんが見つかったときはかなり進行していたので、本人はもちろんですが、私たち周りもショックを受けたものです。
父は健康食品やサプリメントも通販などで頻繫に購入していました。実家に行くと『皇〇』『黒酢にんにく』など有名なものをはじめ、ありとあらゆる種類の健康食品がテーブルの上に並んでいました。
私の父くらいの年代としては、割と平均的な生活ではないでしょうか。
父の亡くなった年齢は決して長生きではありませんが、早世ではないと思います。
私は薬剤師ですから西洋薬はもちろん、漢方薬も詳しい方だとは思います。父にも西洋薬のことは相談されて、よく聞いてくれました。ですが、漢方薬や健康食品はなぜかこちらの勧めるものをあまり聞いてもらえなかったのです。がんにかかってからは『がんには〇〇が効く!』のような書籍をたくさん読んではその本に書いてある〇〇←漢方薬や健康食品 を買って飲んでいました。
ある時父の買った『がんには〇〇が効く!』関係の書籍に載っていた『白豆杉(はくとうすぎ)』という植物のお茶ががんに効くから手に入れて欲しいと言われました。調べると白豆杉とは紅豆杉(こうとうすぎ)と同じものだとあります。
紅豆杉とは、中国雲南省などに自生している高山植物の一種です。1956年アメリカの化学者が紅豆杉の抽出物に抗がん作用があることを立証しています。日本でも1997年に抗がん剤として認可(保険適用は卵巣がん・乳がん・子宮がん・肺がん)されています。今では世界50数か国で抗がん剤として使われているそうです。
なぜか白豆杉は紅豆杉よりとても高額だったので、私は父に『白豆杉と紅豆杉は同じもの。白豆杉は高額だから紅豆杉を飲んだらいいよ』と言いました。ですが父は自身の読んだ本に『白豆杉』と書いてあるから、たとえ高額でも絶対に白豆杉が欲しい!と譲りません。
父が支払いをするとはいえ、同じものなのになぜか高額なものを買うのはもったいないと思い、何度も『同じものだから紅豆杉にしたら』と丁寧に説明して勧めましたが、絶対に聞いてもらえませんでした。
医学博士の書かれた本の力の前で、薬剤師の冷静な判断は無力でした。
漢方薬局でも、いつも一生懸命良かれと思うことをお勧めしていますが、空回りすることもあります。
勉強して、お客様のために良いと思う情報をお伝えしていますので、もっと信頼していただけるようにがんばっていきたいと思います。